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北朝鮮のミサイルについて

 2021年9月8日午前6時38分ごろ北朝鮮がミサイルを1発発射しました。

 今回のミサイルは新型の極超音速滑空ミサイルで今までとはまた性質が異なるミサイルを北朝鮮が持ったことになるわけです。

 今回は極超音速滑空ミサイルとはそもそも何なのかについて紹介します。

 

極超音速滑空ミサイルとは

 極超音速滑空ミサイルはマッハ5以上で飛行し、弾道軌道ではなく下図のように弾道ミサイルと比べ低い高度を飛行し、上昇と降下を繰り返し行うという特徴があります。また、弾道ミサイルと異なり途中で軌道を変更することができるため、ミサイルの軌道予測がしにくいという特徴があり、現在のミサイル防衛ではミサイルが遠方にある時点で迎撃することが難しくなっています。

画像出典: 米軍航空戦闘軍団、「高速兵器に対する防御(DAHSW)の運用上の観点」 

 今回打ち上げた北朝鮮のミサイルですが、最大高度30kmまで弾道飛行をしたのち200㎞程滑空飛行をしたようです。そのため、現段階では日本に到達することはないため脅威ではありません。しかし、将来的に長射程化するために北朝鮮は開発を行うでしょう。そうなった場合、ミサイルが目標に向かって降下するとき以外で迎撃を行うことが難しいと考えられます。

 現在の日本のミサイル防衛ではSM-3とPAC-3を用いています。これらのミサイルの役割はそれぞれ異なり、SM-3は大気圏外でミサイルを迎撃することを目的としており、高度70km以上の目標を迎撃することができます。一方PAC-3では大気圏内でミサイルを迎撃することを目的としており、高度20km以下の目標を迎撃することができます。

 このように防衛する高度が分かれているのですが、極超音速滑空ミサイルは高度40km前後を滑空するため、目標に向けて高度を下げる終末軌道になるまで迎撃を行うことは不可能となっています。ならばPAC-3を用いて終末軌道時に迎撃すればいいという考えになってしまいますが、広範囲を防衛可能なSM-3と比べPAC-3では半径20kmほどの範囲しか防衛することができません。そのため限られたエリアしか防衛できないというデメリットがあります。

 以上のように現時点では極超音速滑空ミサイルから広範囲の防衛を行うことが困難なので、現在アメリカでは新たな迎撃ミサイルの開発を行っているようです。

 

余談

 今回北朝鮮が打ち上げた火星8号は朝鮮新報によると、アンプル化されたミサイル燃料系統というものを取り入れているらしい。このアンプル化という単語の意味が分からなかったのだが

 アンプル化とは、液体燃料を容器に入れ、発射するたびにはめ込む方式を指すとみられる。従来は液体燃料を注入する方式のため注入に時間を要するが、アンプル化することで固体燃料のように迅速、かつ常時発射が可能になる。韓国の21世紀軍事研究所のリュ・ソンヨプ情報分析官は「運用面で固体燃料とほぼ差がない」と説明した。

*1

という意味らしい。現時点では火星8号でしか使われていない技術なのだが、今後ICBMなどでもこの技術を用いられるようになるとミサイル発射前の兆候を探りにくくなるのではないかと思う。

 

*1:聯合ニュース「北朝鮮が新型極超音速ミサイル「火星8」試射 金正恩氏は立ち会わず」より引用